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中野 相続裁判(平成20年(ワ)第23964号)

中野 相続裁判(平成20年(ワ)第23964号)



相続裁判で天候が争点に


相続裁判で天候が争点になるという珍しい事象が発生した。問題の訴訟は母親の死後、生前贈与や遺贈が無効であるとして長女が長男夫婦を訴えた事件(平成20年(ワ)第23964号、土地共有持分確認請求事件)である。特定の日にちに台風が直撃したかをめぐって原告と被告が真っ向から対立した。

この裁判の第6回口頭弁論が2011年5月19日、東京地方裁判所712号法廷で開かれた。原告本人、被告本人2名、被告復代理人・松木隆佳(セキュアトラスト法律事務所、後にリベラルアーツ法律事務所)が出廷した。最初に裁判所の構成が変更されたため、弁論の更新を行った。原告は原告第12準備書面、原告第13準備書面、原告第14準備書面を陳述し、甲第80号証から甲第112号証拠までを証拠として提出した。被告は被告準備書面(12)を陳述し、乙第92号証を証拠として提出した。

原告第12準備書面及び被告準備書面(12)は原告・被告各々の主張である。甲第80号証から甲第111号証までの証拠は茶道具や懐石道具の売買価格で、遺産である茶道具や懐石道具の評価額を立証するものである。ここで確認された金額は原告第12準備書面別紙物件目録でまとめられている。これらは口頭弁論期日の一週間前に相手方及び裁判所に送付されたものである。これで通常は期日を迎えるが、今回は双方から目まぐるしい文書のやり取りがなされた。

原告は5月15日付で被告準備書面(12)に反論する原告第13準備書面及び甲第112号証を送付した。原告第13準備書面は被告準備書面(12)に対する全面的な反論になっているが、特に被告準備書面(12)の新たな主張を問題視している。被告準備書面(12)では、2007年7月15日は台風が直撃し、風が強かったために被告は病院には行っていないと主張する。これは従前の被告主張には存在しなかったものである。

これに対して原告は、当時は台風4号が九州地方などで猛威を振るっていたが、東京には直撃していないと反論した。この日の天気は曇りで、風速は秒速6メートル程度であった。それを示す証拠・甲第112号も送付した。台風4号が猛威を振るったという記録の存在を奇貨とした被告による後付け主張とする。

これを受けて、被告は5月17日付で乙第92号証を提示し、甲第122号証の反証として7月15日の10時台には時間降水量12ミリの雨が降っていたと反論した。尚、被告証拠説明書には「降水雨量」と書くべきところを、「香水雨量」とした誤変換がある。ところが、原告は5月18日付で原告第14準備書面を送付して、乙第92号証によって台風直撃との被告の虚偽主張が再確認されたと反論した。

第一に病院の面会時間帯である午後は雨がほとんど降っていない。甲第112号証が天気を曇りとしたとおりである。

第二に7月15日の最大の時間降水量は被告が主張する10時台の時間降水量12ミリであるが、これは台風直撃時の大雨には程遠い。

第三に乙第92号証でも風速は秒速6メートル程度であって、台風直撃時の強風には程遠い。

以上より、台風は直撃しておらず、外出を控えるような天候ではなかったと主張した。

因みに2011年9月に発生した台風15号の際は、首都圏ほぼすべての鉄道が止まり、交通が麻痺した。JR各社によると、在来線は、風速20メートルで速度規制がかかり、風速25メートルで運転見合わせとなる。新幹線は、風速30メートルで運転見合わせとなる。2012年4月の爆弾低気圧は広い範囲で最大瞬間風速30メートル以上の暴風を観測した。

口頭弁論では被告復代理人・松木隆佳が異議を唱えた。原告準備書面の陳述の制限と原告提出証拠の却下を申し立てた。不思議なことに松木は、原告提出証拠を却下するならば被告提出証拠も撤回すると述べた。自ら提出した証拠が真実に基づくものと自信があるならば撤回する必要はない。

松木の異議に対し、裁判長は原告提出証拠を「立証の問題」であり、「時機に遅れた攻撃防御方法とは考えていない」と斥けた。そして原告提出証拠のうち、原本のあるものの証拠調べを行った上で、結審を宣言した。今後については和解勧試を行うと述べ、和解期日を指定した。