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中野 相続裁判(平成20年(ワ)第23964号)

中野 相続裁判(平成20年(ワ)第23964号)



相続裁判でカルテと遺族の陳述の矛盾が明らかに


母親の死後、生前贈与や遺贈が無効であるとして長女が長男夫婦を訴えた訴訟(平成20年(ワ)第23964号、土地共有持分確認請求事件)の第5回口頭弁論が2011年3月10日11時から東京地方裁判所民事712号法廷で行われる。原告と被告長男の妹の証人尋問が行われる予定である。

妹の証人採用は1月17日に東京地裁民事610号法廷で行われた第4回口頭弁論の評議で決定された。第4回口頭弁論は原告と被告(長男と配偶者)の3人の当事者尋問が行われた。その内容を踏まえ、「他の相続人の話も聞きたい」ということで妹の証人尋問が決まった。

第4回口頭弁論では最初に裁判長が「裁判所の構成が変わった」(裁判官の交代)として、弁論の更新を宣言した。続いて原告と被告が提出した書証(甲第55号証「乙87号証の調査結果についての陳述書」、乙第91号証「被告長男陳述書」)の証拠調べを行った。その後で原告、被告長男、休憩をはさみ被告配偶者の本人尋問が行われた。

この裁判では89歳で他界した母親の治療に最善が尽くされたかという点が論点になっている。本人尋問ではカルテと被告の陳述の齟齬が明らかになった。

カルテには「既往歴」に認知症と記載されている。ところが、病院との話し合いの窓口であった被告長男は本人尋問で「私は認知症とは言っておりません」と否定した。

母親は危篤時も酸素吸入なしで苦しそうに自力呼吸していた。カルテには「familyの要望通りO2 inhalation(酸素吸入)も行われない」と記録されている(医師記録2009年9月3日)。ところが、これも被告長男は本人尋問で「酸素吸入については、私も(医師からの説明を)受けておりません」と否定した。

高度医療の拒否についてもカルテと被告長男陳述は矛盾する。カルテでは以下の通り、被告長男が高度医療を拒否したと記録されている。

医師記録8月20日「family sonは延命につながる治療を全て拒否。現在DiV (注:点滴)で維持しているのも好ましく思っていないようである。」(母親の息子sonは被告長男しかおらず、family sonは被告長男である)



息子が延命治療をすべて拒否したと記録されている医師記録

息子が延命治療をすべて拒否したと記録されている医師記録



医師記録8月27日「……変更、増強したいところであるが、familyはやんわりとであるが、高度医療は拒否されている」

病歴要約「ご家族は一切の延命的治療を望まれなかったため、DiV (注:点滴)とエンチベース(注:皮膚のかぶれ等にぬるボデイクリーム)のみとした。」

母親の治療について被告長男が独断で決めたことか、子ども達が相談して決めたことかが次に問題になる。この点で原告と被告長男は真っ向から対立する。被告長男の本人尋問では以下のような激しい応酬がなされた。

原告「ですから、嘘をついているのです。」

被告長男「あなたが嘘をついているんだ。」

原告は何の相談も受けておらず、同意もしていないと主張する。これに対して被告長男は本人尋問で以下のように陳述した。

「何回か延命の相談をしてほしいというふうに医師から告げられておりまして、その都度、3人で相談しておりますが、延命はしないという方向で決まっております。」

ところが、被告長男は陳述書では以下のように述べる。

「私が、妹たちを集めて母の延命に関して相談をしたのは、この6月29日と、救急搬送時の6月18日の2回だけです。」と述べる(乙第89号証「被告長男陳述書」18頁)。

これは都度相談したとの陳述と矛盾する。少なくともカルテでは、6月29日の約2か月後の8月20日に被告長男は「延命につながる治療を全て拒否」している。これは妹と相談せずに拒否したことになる。